ウェイブ(Waive)とは?
NBAにおける「ウェイブ」とは、
チームが選手との契約を解除する公式な手続き
を指します。単なる解雇ではなく、契約解除には一定のルールと手続きが設けられています。
具体的には、選手がウェイブされると、「ウェイバー・ワイヤー(Waiver Wire)」と呼ばれる公開リストに48時間掲載され、その間に他のNBAチームがその選手を"クレーム(Claim)"することが可能となります。
ウェイバー・ワイヤーに掲載された選手のリストを確認するフロントオフィス。
各チームは48時間以内に判断を迫られます。
ウェイブの流れ
ウェイブ申請
チームが選手をWaive(契約解除申請)します。これにより選手は「ウェイバー・ワイヤー」と呼ばれるリストに掲載されます。
48時間のウェイバー期間
この間、他29チームがその選手を現行契約のまま引き取る権利を持ちます。クレームが複数あった場合は、そのシーズンの
勝率が低いチーム
に優先権があります。
クレームなし→FA化
48時間以内にどのチームもクレームしなければ、選手は"自由契約(FA)"として、好きなチームと新契約を結ぶことができます。
「ウェイブ」と「バイアウト」の違い
バイアウトは主に
ベテラン選手が優勝を狙うチームへ移籍する際
に用いられます。
チームにとってはサラリーの節約、選手にとっては新たなチャンス獲得というメリットがあります。
ウェイブされる主な理由
ロスターの整理
トレードやFA補強後に枠が足りなくなり、選手を整理する必要がある場合に行われます。NBAチームは最大15名(プラス2ウェイ契約2名)という制限があります。
サラリーキャップ調整
キャップヒットを抑える目的で選手をウェイブすることがあります。特にストレッチ条項を適用する場合は、短期的な財政的余裕を作るために実施されます。
成績不振や怪我
期待したパフォーマンスが得られない選手や、長期離脱が予想される怪我人をウェイブすることで、チーム強化を図ります。
Gリーグ⇄NBA昇格の流動性確保
2ウェイ契約選手との入れ替えなど、柔軟なロスター管理のために実施されることがあります。シーズン中の状況変化に対応するための手段です。
実際のウェイブ事例
ラマーカス・オルドリッジ(2021年)
長年サンアントニオ・スパーズで活躍した名センターは、2021年にスパーズとバイアウト契約を結び、ブルックリン・ネッツへ移籍。優勝を目指すネッツの戦力となりました。
ブレイク・グリフィン(2021年)
デトロイト・ピストンズからバイアウトされたグリフィンは、同じくネッツへ加入。かつての爆発的なアスレティシズムは失われていましたが、経験と技術で貢献しました。
2024年のトレードデッドライン後には、複数チームがロスター整理のためベテランをウェイブし、プレーオフを目指すチームがそれらの選手を獲得するという流れが顕著に見られました。これはNBAの「買い手市場」と「売り手市場」の明確な分かれ目を示しています。
関連ルール・制度の豆知識
ストレッチ条項(Stretch Provision)
選手をウェイブした場合、その残り契約金を
複数年に分割してキャップヒットに計上
できる制度です。
例:3年600万ドル契約の残り2年分をストレッチ適用 → 約200万ドルずつ3年間キャップヒット
デメリット:その分「デッドマネー(使えないキャップスペース)」が残り続ける
10日間契約との関係
ロスターに空きが必要な10日間契約を結ぶため、
直前に選手をウェイブして枠を空ける
ことがあります。シーズン後半に怪我人が出たチームがよく活用する戦略です。
2ウェイ契約との整理
2ウェイ契約の上限(2名)を超えた場合にも、契約解除が行われます。Gリーグで成長した選手をNBAロスターに昇格させる際の調整手段となります。
ウェイブからの即再契約はNG
:チームがウェイブした選手と再契約するには、
一定期間(1年間 or そのシーズン終了まで)空けなければならない
というルールも存在します。
よくある誤解
「ウェイブ=即フリーエージェント」ではない
選手がウェイブされてもすぐにフリーエージェントになるわけではありません。
まずは48時間のウェイバー期間があり、この間に他チームがクレームする可能性があります。クレームされれば元の契約条件で移籍することになります。
バイアウトされた選手=すぐどこでも契約できる
バイアウト後の選手は確かに新たなチームと契約できますが、プレーオフ出場資格には期限があります。例えば、3月1日以降にチームに加入した選手はそのシーズンのプレーオフに出場できないというルールが存在します。
これらの誤解を解消することで、NBAの移籍市場やチーム編成の動きをより正確に理解することができます。特にトレードデッドライン後のバイアウト市場は、優勝を狙うチームが戦力を補強する重要な機会となっています。
まとめ:ウェイブを知れば移籍市場が何倍も面白くなる!
戦略的人事管理
NBAではトレードやFAだけでなく、「ウェイブ→FA→再契約」といった複雑な人事戦略が日常的に行われています。チームの短期・長期計画を読み解く鍵となります。
財政的側面
サラリーキャップ、ラグジュアリータックス、ストレッチ条項など、財政的な観点からもウェイブの動きは重要です。チームの財政状況を理解する助けになります。
優勝争いへの影響
優勝を狙う強豪がどのようにロスターを整えているのか
理解するためには、ウェイブ制度の知識が欠かせません。特にシーズン後半のバイアウト市場は注目です。
観戦の楽しさ向上
ウェイブ制度を理解することで、チームがなぜその選手を手放したのか、なぜ他チームがクレームしなかったのかといった背景が見えてきます。NBAをより深く楽しめるようになります。
ぜひこの記事を参考に、次回のトレードデッドラインやオフシーズンの動きをより深く楽しんでください!NBAの人事戦略の奥深さを知ることで、試合観戦がさらに面白くなることでしょう。